影絵劇の起源

 影絵劇は、シャーマンが布に死者の霊を呼び寄せる降霊術から発達したものとされています。降霊術から発達した影絵劇は、ギリシャやインド、中国では紀元前から行われていたとの口承があり、ともあれ芸能のなかで、最も古いものだとされています。
 アジアの伝統の影絵劇は、皮を薄くなめして彩色したものが多く、カラーの人形で神話や伝説を演じてきました。現代の影絵劇では、舞台照明をふんだんに用いて、色彩豊かで幻想的な舞台が創られています。
 最も古い芸能ではありますが、映像によって多彩な表現を可能にしてきた現代では、以前にもまして、世界で革新的な技法が生み出され、競われています。

劇的な世界をダイナミックに描く

 主人公が理想を求めて生き、現実の中で苦労し、それにもめげず夢を追い続ける姿を描くには、社会を重層的にとらえた方が問題を明確にします。
板人形くりぬき赤いソテツ・皮人形くりぬき
 そこで呼び覚まされた矛盾が、個ばかりでなく社会に広がったとき、劇は動的世界を導きます。小学生には、淡々と語る絵本のような作品ばかりではなしに、自由奔放、ダイナミックなドラマを・・・とみんわ座では考えています。

影絵人形劇 ~影絵劇ではなく~

 日本の影絵劇は、絵と語りを中心にして発達してきました。その長所を認めつつも、人形劇としてみた場合、人形の動きが語りによって説明されるよりも、人形自身の豊かな表現力をもって己を語る方が個性的であり、よりドラマになると思います。そこで劇の内容に合った人形の改良に努めてきました。従来の板人形、半丸物の人形、丸物、皮人形と、演技に特徴のある、多彩な人形が登場します。みんわ座が影絵劇ではなく、あえて影絵人形劇と呼ぶゆえんです。

己れ自ら発見する劇作りを

 子供は、親や社会が保護し育ててゆかなければならない側面があります。一方、今の社会を共有する同時代人でもあります。昭和史は、価値観の流動する見本でした。この立場からすれば、主体的に生きる目と、枠にとらわれない思想こそ人に求められるでしょう。理想と現実、愛とエゴ。己の心情と社会の矛盾を絡ませながら、どのように生きるのか。子供たちに問いかけるドラマ作りをして参りました。
白いりゅう黒いりゅう中国・皮人形くりぬき

日本伝統の遊び・技術を現代的創造に

 日本の伝統的遊びである手影絵。みんわ座では1973年から、カニ、アヒル、ウサギ、カエルなどの作り方を子供たちに説明しながら、それらを使った手影絵の劇へと発展させ、上演しています。
 そして今、多くの研究家の協力を得て、江戸時代に流行した日本的影絵劇とでもいうべき「写し絵」の風呂(スライドを機能性豊かにしたもの)を現代的に再現し、迫力のある芝居作りに、いっそうの効果を発揮しています。文化的に豊かな資産を掘り起こし、現代的に生かす研究もまた、大切な仕事だと思うからです。

日本の古典・世界の民話を

 民族の興亡、文明の消長。その激動の歴史をくぐり抜けて、今日に伝えられる古典、世界の民話には、時代を超えて、今も人の心を打つ、理想・祈り・愛・慟哭にあふれたものが数多くあります。英知の固まりともいうべきそれらの作品を、みんわ座の名の由来通りの願いとして、上演・紹介をしていく所存です。

外国の影絵劇

 影絵劇といえば、すぐに中国の名前が出るほど、長い伝統がこの国にはあります。
中国皮人形くりぬき3皮人形・西遊記くりぬき

伝説での起源は古く、紀元前120年、皇武帝の頃とされています。実際に町々で上演されている様子が書物に現れるのは、今から1000年位前からです。ロバの皮を薄くすいて彩色をした武将の人形は、まるで京劇の役者そのものといった格調を持ち、日本の影絵の人形とは異なり、自由自在に宙を駆け巡る演技に特徴があります。今でも「西遊記」などの活劇。武闘ものを得意なレパートリーとして、多くの人たちから喝采をよんでいます。
 もう一方の雄は、インドネシアの、ワヤン・プルワで、古代インドの叙事詩、マハーバーラタ、ラーマーヤナ物語などを主な演目にして、一晩に続く長編芝居を今日に伝えています。
 アジアには、他にタイ・ビルマ・カンボジア・インドにも、皮の影絵劇があり、隣の韓国でも60年位前までは上演されていました。
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 アジアで、伝統の影絵劇がないのは日本くらいのもので、それが無いのはなぜか、重要な研究課題でもあります。
 演劇の故郷ともいうべきギリシアの人々は、影絵は我が国が起源であり、アレキサンダー大王によってインドにもたらされたと主張しています。カラギョウズと呼ばれるそれは、テレビ放送でも人気を拍しています。
 トルコのカラギョウズは、陽気で喧嘩ばやく、時の権力者や偉ぶった人たちを、チャンバラをやって叩きのめす民衆のアイドルです。どうも皮芝居の人形たちは、大活劇向きで賑やかな方が好きとみえます。
 アジアからヨーロッパに伝えられた影絵人形劇は、18世紀にはベルサイユ宮殿や、パリのロワイヤル宮殿広場でも上演されるほどの人気を拍していました。現在フランスはもちろん、イギリス・ハンガリー・オーストラリアなどでも、現代的に工夫され上演され続けています。
※写真の皮人形は総て、みんわ座が蒐集したものばかりです。